レポート
第5分科会 | 買い上げ・ 借り上げ・契約 の仕方 |
ナショナル・トラストで不動産を取得し所有・維持管理する際には様々な律がからみます。すでに買い取りや保全契約を行なっている全国の例を挙げ、今後不動産を買取る、または借り上げる際の手続きや手法に関する意見交換をしましょう。 | 進行役
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本ワークショップでは、土地を永久保存するための過程について話し合い、プロパティの所有を最終目標とすることを確認した。
1.借り上げ
事例報告1柿田川緑のトラスト(鵜野)
柿田川では、土地を手放したくない、あるいは税金が払えないという理由から、土地は売りたくないが協力するという地主が多い。そのため一般より安く借り上げしている。
事例報告2神奈川トラスト緑財団(中丸)
地主に貸してもらうには、固定資産分プラスαがなければならない。土地保有税は高いため、それを地主が納めるだけの賃貸料を払うのは難しい。神奈川トラスト緑財団では、市町村が土地を借りている。そのため市町村の権限で減免されるので、安い賃貸料で借りることができた。市町村が借りる方が、相手が安心しやすいというメリットがある。
契約の際は一般に開放するかを盛り込み、責任の所在を明確にしておく必要がある。住民とのトラブルも想定しておくべきだ。神奈川緑トラストでは、賃貸契約は10年以上1ha以上と決めている。
⇒トラスト運動が理解されにくいことを補うため、市町村との一緒に契約に行き、どちらに貸しても同額であることを示すのがよいのではないか。
2.買い上げ
事例報告1柿田川緑のトラスト(鵜野)
柿田川では、町長の交代に振り回されないために土地を所有したいと考えている。しかし地主はトラストより町に売りたがる。
⇒イギリスではナショナルトラスト法が整備され、トラストが収得した土地が永久保存されることが保証されている。そのため会員が安心して、土地を売ることができる。信用されるしくみが大切である。
3.行政と協力するには
行政は「管理は所有者責任」として、個人所有地には手をつけない。しかし、遠方に住む所有者も多く、連絡をとりにくい。それを行政にどう説得するかが問題だ。(川原)
⇒例1;まずグループを作りお金を集めた上で市を説得し、足りない部分を市に補ってもらう。「海老でタイをつる」
例2;宮城県では、NPOが減免申請したところ、市の方針と合致したためその後も減免が保証された。
行政は縦割りである。そのしくみをつかみ、横の連携を図るようにしなければならない。神奈川の会員には、県の職員が多く議員は強制的に加入している。議員の協力も必要だ。
4.住民の協力を得るには
旧住民は、その環境の素晴らしさに気付かないことがあり、世代間に意識の差があるようだ。住んでいる人が毎日の生活の中で問題意識を持つことが大切である。
⇒①住民協定
時間はかかるがたくさんの合意を得て住民協定を結ぶことができれば、その協定は契約より強い結束力を持つ。
②立ち入り契約
住民の問題意識を高めるためにも、近くの里山に立ち入る権利を認めてもらいたい。立ち入り契約が地主との繋がりをもつきっかけになるかもしれない。立ち入り契約の雛形を作ってもらいたい。
③地域への貢献
住民にお金のおちるようにするのも、支援者をふやす手段である。(例、レストランや土産屋の地図を作る)
④マスコミの協力
柿田川では、マスコミのおかげで有名になって地主にプライドがうまれ、信用を得ることもできた。
⑤トラストとは何かを一般に広める。
5.永久保存するために
① 税金の問題
相続税が必要になった場合どうするかを前もって決めておくべきだ。トラスト協会に事例集を集めた契約ハンドブックを作ってもらいたい。
②世代交代
行政側の世代交代同様、トラスト内の世代交代も考えておかなくてはいけない。
③広域ネットワーク
トラスト内でもいろいろな団体が乱立しているのが現状だ。保全の共通した認知を作るために、また信頼性を高めるために、トラスト協会が一役かってもらいたい。
④第三者による評価
活動が理念に対して適当であることを、第三者(例えば協会や行政)が評価するべきだ。
それぞれの団体の多様性を否定しない程度の評価の合意があるとよい。協会がフォーマットを作るといのではないか。正会員を吟味することで企業から信用を得ることもできる。
6.まとめ
◎ 最終的にプロパティを持つことを目指す。
◎ 活動に対する信頼性を守る。
◎ 方向性をしっかり定める。